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更新日:
2024年10月13日
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◎いかめし阿部商店(2024年10月13日)
「いかめし阿部商店」は、北海道の駅弁として有名な「いかめし」を生み出し、現在でも製造、販売している会社です。会社は、北海道茅部郡(かやべぐん)森町という場所にあります。
この森町は、古くからアイヌ語で「オニウシ(樹木の多くある所)」と呼ばれていたそうですので、森に囲まれた町だったのでしょう。内浦湾に面した森町は、古くから漁業の地として知られ、江戸時代には箱館周辺の漁民がニシンなどの魚を求めて出稼ぎに来た所だったそうです。江戸時代、函館への街道と室蘭へ向かう噴火湾航路の結節点の宿場町として栄えていた森町で1838年(天保9年)に「阿部旅館」として創業したのが、「いかめし阿部商店」の始まりだそうです。
1902年(明治35年)に北海道鉄道が開業すると、1903年(明治36年)6月28日に北海道鉄道の本郷駅(現在の新函館北斗駅)と森駅間が開通し、森駅と函館駅を1日4便、往復したそうです。「阿部旅館」は森駅開業と同時に駅構内営業の認可を得て、1903年(明治36年)、阿部旅館内に「阿部弁当部」を発足させ、駅弁の販売を始めました。当時の商号は「阿部弁当店」だったそうです。
1904年(明治37年)から駅構内での販売を開始し、当初は幕の内弁当やエビ天丼などを販売し、大正時代には弁当の売上が旅館の売上を上回るほど好況だったそうです。
その後、太平洋戦争中の1941年(昭和16年)、店主の阿部恵三男(あべえさお)氏の妻、阿部静子氏が「いかめし」を考案、いかめし弁当の販売を始めたそうです。これは、戦時体制による食糧統制によって米が不足していたため、当時、道南地区で豊漁だったスルメイカを用いて米を節約した商品として考えられたそうです。
開発当初は地域の特産品であったジャガイモやカボチャ、トウモロコシなどをイカに詰める試作を行っていたそうですが、「食べて楽しくない」ことから、米を用いることになったそうです。名称は「いかごはん」とする案も強かったそうですが、阿部静子氏が「ここは田舎だから」との思いから「いかめし」としたそうです。イカに米を詰め込んだ「いかめし」は腹持ちもよく、鉄道で移動する軍人さんにも人気だったそうです。「いかめし」が美味しいと評判になり、事業が好調だったことから1943年(昭和18年)3月に旅館業を廃業し、駅構内営業の専業業者になりました。
しかし、森駅に急行が停車しなくなると売上が減少していきました。このため阿部恵三男氏は1955年(昭和30年)に東京の百貨店での実演販売への参入を発案し、これを実施すると催事での売上が拡大しました。
そして1987年(昭和62年)8月に組織を株式会社化し、株式会社いかめし阿部商店を設立、商号を「いかめし阿部商店」に改めました。「レトルト」などは作らず、催事での実演販売を重視し、事業を展開した結果、百貨店や物産展での売上が90%を占めるまでになりました。京王百貨店(東京都新宿区)で毎年正月に開催されている「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」では、20世紀に行われた全35回のうち、32回で売上1位になるなど、大人気商品となりました。
しかし、コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、物産展や催事がなくなり、事業継続ができなくなったようです。2020年4月1日に本店登記を移転、2020年4月15日に再度移転(神奈川県横浜市中区)し、同じ名前の株式会社いかめし阿部商店、2代目法人を設立し事業譲渡すると、初代法人(株式会社いかめし阿部商店)は2020年5月15日に株式会社扇商店と商号を変更した上、会社解散を決議し、2020年8月26日に横浜地方裁判所から特別清算開始決定を受けました。
事業譲渡を受けた2代目法人は三印 三浦水産株式会社(さんじるし みうらすいさん、本社:北海道函館市、設立:1987年(昭和62年)1月23日、資本金:4,000万円、代表取締役社長:三浦貞子)の傘下に入り、2020年5月1日には今井麻椰氏が社長に就任しました。
紙に書いたレシピはなく、口承で伝えられているものの、作り方は昔から味は変わっていないそうです。生のイカの胴体に、生の国産のうるち米ともち米をブレンドして入れてボイルしているそうです。お湯で煮た後、タレで煮るそうですが、大鍋で一気に大量に煮るので、中にはタレが染みていないものもあるそうです。クレームになることもあるそうですが、見た目でタレが染みていないのも「いかめし」として正解なのだそうです。機械で作っていないため、ムラはあるものの、家庭料理のようなもので、飽きないのかもしれません。また、作る職人さんによって味付けも微妙に異なっているそうです。
タレは作り置きせず、その都度作っているそうですが、配合はとても難しく、最終的には職人の舌で確認して決めるそうです。イカは煮ると半分くらいに縮んでしまうため、その時に使うイカのやわらかさ、厚みによっても配合を変えるそうです。煮てみて、イカのテカり具合を確認しながら醤油を足したりザラメを足したり、調整するそうです。イカの特性、温度、湿度など、様々な要素を考えて配合しないと、納得できる味にはならないそうです。「秘伝のタレ」があるのではなく、このような作業のノウハウ、代々、受け継がれている秘伝なのだそうです。
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