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更新日:
2018年12月3日
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◎ソース(sauce)(2018年9月23日)
ソースは、英語、フランス語、ドイツ語、ともにスペルは同じ「SAUCE」であり、その語源はラテン語の「サルスス(salsus:塩した)」だといわれています。この「ソース」という言葉は、食塩を使用して作られた液体調味料の総称と考えられます。日常的に使用されているだけでもウスターソース、トマトケチャップ、マヨネーズ、ホワイトソースなど、多くの種類があります。世界各地で、その地域、国ごとの歴史や環境の中で食事を美味しくするために生まれ、育てられてきた各地域固有のソース(液体調味料)が存在し、日本においては醤油も、その1つであるといえます。
フランス料理やイタリア料理等は料理の主材料をより美味しくするために、料理ごとに調和するソースが作られるともいわれているそうです。ヨーロッパでは各家庭や地方ごとにそれぞれの好みに応じて辛味、香り、色付けのための香辛料や調味料を使い分けて料理に合わせたソースを作るという習慣があったと言われているそうです。
フランス料理はブルボン王朝時代(1589~1830年)に完成されたと言われているそうですが、フランス料理に欠かせない基本的なベシャメルソース、ドミグラスソース等もこの時代に作り出され、発展したと言われているそうです。
醤油ではないソース類が日本に初めて伝来したのは幕末期、鎖国を開港した直後というのが定説のようです。ただ、実際には江戸時代の中期、長崎の出島における日蘭貿易の最中にも伝来しており、長崎ではオランダ人が色々なソースを作って食べていたと考えられます。しかし、その食文化を当時の日本人が取り入れることはできず、日本人に広まっていったのは明治時代の初期まで待たなくてはならなかったと考えられます。
明治時代初期は、まさに文明開化の時代であり、西洋化がどんどん進む一方、食生活にも変化がみられ、それまで魚介類に頼っていた動物性蛋白を牛肉や豚肉などの肉類、チーズやバターやハムといった加工食品からも摂取するようになった時期です。様々な西洋料理(洋食)が輸入されるとともに、様々なソースが輸入されたと考えられます。
1872年(明治5年)刊行の「西洋料理指南」という本には「ウスターソース」のことが「醤油ナリ。此品ハ我国二有セス我醤油ヨリ上品トス。舶来品ヲ用ユベシ」と記載されているそうです。海外の国でウスターソースは、スープやシチューなどに数滴落として風味をつけたり、調理の際の味付けに使うものだそうですが、日本には醤油を副食物などに掛けたり、漬けたりして食べる習慣があったことから、ウスターソースも醤油と同じような感覚で使ったと考えられます。
当時、ウスターソースは瓶に詰められて輸入されていたようですが、酸味や香辛料の味が強すぎ、日本人の味覚にはあまり馴染めなかったようです。このため日本人の味覚に合うように改良、工夫された日本風のウスターソースを作る会社が生まれました。
1885年(明治18年)にはヤマサ醤油(株)が「ミカドソース」の商標で販売を開始したのを皮切りに1894年(明治27年)には越後屋(布谷徳太郎)が「三ツ矢ソース」を、1896年(明治29年)には山城屋(木村幸次郎、現、イカリソース)が「錨印ソース」を、1899年(明治32年)には野村洋食料品製造所(野村専治)が「白玉ソース」を、関東地区では1900年(明治33年)に伊藤胡蝶園(長谷部仲彦)が「矢車ソース」を、1905年(明治38年)には三澤屋商店(小島仲三郎、現、ブルドックソース)が「犬印ソース」を、1906年(明治39年)には大町信が東京都新宿区(当時牛込区)の新小川町でソース工場を開業、高品質のウスターソース「MTソース」を製造、販売、1912年(明治45年)には荒井長次郎(後のチキンソース(株)、その後、倒産したらしい)が「スワンソース」を発売しています。さらに中部地区では1908年(明治41年)には愛知トマトソース製造(蟹江一太郎、現、カゴメ)が「カゴメソース」を発売するなど、明治後半には各地で多種多様なウスターソースが製造、販売され、ウスターソース市場が大きくなっていました。
こうして全国的に生産、販売され、日本人にウスターソースが知られて利用されるようになると、「ソースといえばウスターソース」という認識が定着していったと考えられます。ただ、その他の洋風調味料はどうかと言えば、トマトケチャップは1907年(明治40年)に前述の蟹江一太郎氏がカゴメケチャップを、マヨネーズは1925年(大正14年)に中島薫一郎氏がキューピーマヨネーズの製造、販売を始めました。
ただ、「ソースといえばウスターソース」という認識が定着しており、現在では日本農林規格(JAS規格)で「ウスターソース類」という分類がされ、一般的な粘度が薄いシャバシャバなウスターソース、少し粘度がある中濃ソース、粘度が高くドロッとした濃厚ソースについて細かい規定がされています。
現代の様々なソースを口にする機会が多い現代日本人からすると「ソース」といえば「ウスターソース」というのは少し、疑問、抵抗がありますが、日本の歴史の中では、これが自然なようです。むしろ、「ソース」と聞いて、いろいろな種類のソースを思い浮かべることができる時代というのは食文化が豊かで、素晴らしいということなのかもしれません。
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